戦国時代は仏教の影響もあり、公には動物の肉を食すことは禁じられていました。しかし、肉が意外に食べられていた事は、以前にも書きましたよね。そして今回はなんと戦国時代のすきやきのエピソード。あるんですね。こんな話が…
時は天正十八年(1590)。秀吉の小田原城攻めの時、秀吉配下のキリシタン武将・高山右近(たかやまうこん)は、陣中に大量の牛の肉を蓄えていました。
ある時、この高山右近の陣を蒲生氏郷、細川忠興が訪れます。なにせ小田原城を圧倒的兵数で包囲しているために、戦闘らしい戦闘がなく、少々退屈していたのです。そして高山右近は二人をもてなす為に、鍋の用意を始めました。そして出てきたのが牛肉。
最初は二人とも少し抵抗があったようですが、右近のススメもあり、おそるおそる口に運びます。この時二人が食べたのが、今日のすきやきに近い料理だったといわれています。細川家御家譜によれば、その後も度々、右近の陣中を訪れ、牛肉料理を楽しんだそうです。
食文化史研究家の永山久夫氏によれば、牛肉は動物性タンパク質の塊で、体を作る原料になり、牛肉に含まれるヘム鉄と呼ばれる鉄分は血を作り、ビタミンB群はエネルギー代謝の向上、免疫力強化、細胞の老化防止といった効果があるそうです。
重い甲冑を身に付けて出陣しなければいけなかった武士にとって、牛肉をはじめとする肉類は、生理的に体が欲していた食材だったのかもしれません。